うつ病について

うつ病は、脳の神経細胞の間で、情報伝達がうまくいかなくなることにより、心と身体に不調があらわれる病気です。病気による強い抑うつ状態が長く続き、「眠れない」「食べられない」などの身体症状も出てくるため、日常生活に支障をきたしていきます。
うつ病は、誰でもかかりうる病気です。特に誘因なくかかることも、強いストレスにさらされてかかることも、強くなくとも慢性的なストレスでかかることもあります。季節の変化や、バリバリ働いて昇格したあとでさえも、うつ状態のきっかけになり得ます。
うつ病の症状について
うつ病は、適切に治療すれば良くなります。うつ病かな?と思われましたら、心療内科・精神科・神経科の病院やメンタルクリニックにご相談ください。
精神面の症状
- 意欲が出ない
- 好きな事への興味や関心がなくなった
- すべてに対して億劫
- 人付き合いが嫌になった
- 仕事をするのが辛くなった
- 新聞やテレビの内容が、頭に入らない
- 気持ちの落ち込み、憂うつな気分、悲しい気持ち
- 将来への希望が感じられなくなり、悲観的に考えがち
- 全て自分が悪いと思う、自分の責任だと思う、罪悪感を感じる
- 絶えず焦って、イライラする
- うまく考えられない
- 物事に集中できない
- 物事の判断ができない、選んで決めるのに時間がかかる
身体面の症状
- 眠れない
- 食欲がない、食べ物がおいしくない
- 体重が極端に減った
- 肩こり・頭痛がひどくなった
- 体がだるい、すぐに疲れる
うつ病の原因について
うつ病では、脳内の神経伝達がうまくいかなくなっていますが、その原因は単一・明確ではありません。その人の物事の捉え方・考え方、周囲の環境や日常生活などが複雑に絡み合い、ストレスが影響して引き起こされます。ストレスは、例えば下記のような出来事があげられます。
- 身近な人との死別
- ご自身の病気
- 進級・進学
- 昇進・異動(自分以外も含む)・転職などの職場環境の変化
- 転居、同居家族構成の変化
多くは人間関係の悩みを伴い、家族、同僚や上司、クラスメイトなどとうまくいかない場合は悩みが持続しやすくなります。町内会や幼稚園・学校の役員・行事、お子さんのお友達の親御さんとの関係などがきっかけの方もいます。
うつ病に親和性のある性格傾向としては、以下が挙げられます。
- ルール・決まりごとに忠実
- 頼まれると嫌と言えない
- 相手と対立する場面では、自分から折れる傾向がある
- 完璧主義・几帳面・綿密
- 律儀
- 責任感が強い
うつ病への対処
うつ病にかかっても、なかなか医療機関にかからずにいる方も多いです。職場の方やご家族に勧められて、時には無理に連れてこられて受診される方もいます。うまく眠れなくなっている方がほとんどですので、不眠の治療のついでに気分の相談もする、くらいの気持ちで受診されるのも良いと思います。ご本人が受診に踏み切れないことも多いので、周囲の方による受診の援助は大切です。
うつは脳の過労 とにかく安心して休養することが基本です
仕事や勉強のペースを落とし、場合によっては職場や学校に相談してしばらく休暇をとってもらうこともあります。自宅でも安心して療養できない場合は、入院することも必要となってきます。本来の判断力が低下しているので、大きな決断をしなければならない場合は先送りしてください。悩みを一人で抱え込まず、周囲の人に相談しましょう。
抗うつ剤の効果が見込めれば、薬剤治療を開始します。抗うつ剤には依存性の問題はありません。不眠や不安・緊張を伴えば、症状に合わせて他の薬も併用することもあります。うつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に回復していきます。そのため治療は焦らずに長期戦のつもりで臨みましょう。
いわゆる「新型うつ病」について
医学的には規定されていません。仕事に臨むとうつ状態になりますが、仕事から離れるとほぼ普段通りの生活ができるタイプの病態を指しているようです。休養はご本人によって確保されていることが多く、その間はある程度元気に楽しむことができます。しかし、いざ仕事となると、意欲が出なくなってしまいます。本来のうつ病同様に休養と薬剤治療を行っても、再燃を繰り返す傾向があります。このタイプでは休養・薬剤治療よりも、職場側の環境調整とご本人が職場に適応する工夫を主軸とする方が、うまくいくことが多いようです。
典型的なうつ病との違い
- 不眠でなく、過眠がみられる
- 食欲は維持あるいは亢進
- 自分でなく他人・周囲を責める
- 人目を気にする
- プライドが高い
うつ病に関してよくある質問
- 家族・周囲の人間はどのように接したら良いですか?
- うつ病の患者さんは、ご自身を責めていることが多いです。
そのためご家族や周囲の方が不用意に励ますと、逆に患者さんを追い詰めてしまいます。できるだけ自然に接し、見守るような立場でいることが大切です。
- 他のお薬と併用しても大丈夫ですか?
- お薬の併用は、飲み合わせによっては薬の効果が消えてしまったり、思わぬ影響が出てしまう場合があります。そのため、市販薬・処方薬問わず、お薬を使用する際には事前に医師にご相談ください。